誰かが呼ぶ声がする。
そのとき僕はキッチンで皿を洗っていた。
隣では妻が野菜を刻み、子供が足にしがみついて「遊んで!」とせがんでいる。
「ちょっと待って、今、仕事が……」
僕はため息をつきながらエプロンを外した。
すると、足がふわりと浮き上がり、いつものように窓から飛び出し空へ吸い込まれる。
身体が変形を始め、服が肌に吸収され滑らかになり、手足が身体の中に収納されていく。
最早見慣れた光景だった。
僕の身体はぎゅうっと長ぼそくなり、最後は巨大ロボットの右手の薬指へと変わる。
前方では、すでに何人もの人間が飛びながら変形し、巨大な人型機械に合体を始めていた。
「お待たせしました!」
叫ぶ間もなく、僕はすでに巨大ロボットの右手薬指へと装着されていた。
隣を見ると、同じく左手薬指となった田中が静かにうなずいている。
頭部の眉間には課長が鎮座し、胴体の中央は部長、両足は営業部の人たちだった。
ロボットの指先が軽く動く。
「よし、準備完了だ!」
課長の合図とともに、巨大ロボットは都市の防衛に向かう。
だが、何も起こらない。
「ねえ、本当に戦う必要あるんですか?」
「一応、通報があったんだけどな……」
街は平和そのもの。
結局、ロボットは公園で鳩に餌をあげて一日が終わる。
夕方、勤務時間が終わったので、
「直帰します!」
僕はロボットから射出され、空を飛ぶ。
僕の身体は徐々にロボットの薬指から人間の姿へ戻り、家の窓からするりと飛び込んだ。
「お父さん、どこいってたの!」
子供が駆け寄ってくる。
「仕事だよ」
「僕も仕事したい!ぎゅーんと空飛んでね……」
僕は苦笑しながら、子供の頭を撫でた。
「そんな楽しいものでもないよ」
—— おわり——
